《ゼニヤのキホン》 2021.6月号より
そもそも錢屋サロンって?
前回は錢屋カフヱーについて、そもそも錢屋本舗本館とこの町との接点としての役割を果たすものだとお伝えしました。今回は錢屋本舗本館4階の錢屋サロンについてです。
錢屋本舗本館の改築を考えた当初はテナント誘致をして賃貸することを検討しましたが、不動産業者が見積もる想定賃料が予想外に安く、その理由を聞いたら「築50年の古いビルでエレベーターのない4階の賃料はこんなもんです」と言われてがっかりしました。新築や駅近に価値があって、利回りを重視する業界の常識にのっとった提案はありきたりでうんざりしていましたから、専門家といわれる方々には任せずに自分で価値を付ける工夫をしようと考えなおしました。
「あったらいいな」をカタチに
東西の2方向にテラスがあるペントハウスで3方向から採光がとれる環境を活かし、街中の暮らしでは実現が困難な、それでも「あったらいいな」と思われるような要素を盛り込んだLDKの機能を持つ大きなワンルームをイメージしました。そこに(日本には薪ストーブに関する規制はありませんが)米国での排ガス規制をクリアした見た目はクラシックですが、最新の薪ストーブを設置。また、日本の住宅事情では設置困難な1970年代の大型(1070×1525×730)スピーカーを、真空管アンプで楽しめるようにしました。さらに、屋上が室外機置場となっている日本のビル事情を勿体なく思っていましたから、芝生を植栽しBBQもできるようにしました。いまは一部を小さな菜園にしようと検討中です。
アイランド型キッチンに家庭用では最高火力のガスコンロとIHコンロ、業務用の食洗機、パン用の発酵器やオーブンを備え、和洋中の調理道具と食器を24客分揃えました。錢屋塾の料理教室などの食を中心とした体験や発信の場として活用しています。
ここで考えて試したことが、現在の錢屋本舗本館全体の原型となっています。