《ゼニヤのキホン》 2021.9月号より

ちょっとしたことをちゃんとやる

 錢屋本舗本館をご愛顧くださっている方は目にされたことがあるかもしれませんが私たちには「ちょっとしたことをちゃんとやる」という行動指針があります。錢屋カフヱーの店内ボードには“Do small things in a great way” と書かれていますが、お気付きだったでしょうか?会社のスローガンとしてはあまりに平凡ですが、これ以外の言葉は思いつきませんでした。

そもそも…の話し

 錢屋本舗本館のリノベーションを考えた時に遡ります。築50年を過ぎた愛着のある建物でしたが船場や堺筋に残るような歴史的建造物でもないこのビルに(税法上の評価や銀行の担保的価値を根拠として)不動産価値は無いものとみなされる業界的常識に嫌気がさしていました。だからと言って個人的愛着を価値とは言えませんから、どうすれば良さを分かって頂けるかは考える必要がありました。

 捨てるものと残すものを見極め、残そうと思ったものは活かし方を考えるといった思考の中から、現在の錢屋本舗本館の活動の基本ができてきたわけですが、その根本になったのはむしろ歴史的建造物とは言えないこの普通の古ビルの、その普通のレベルの高さでした。

 凄いことをしている訳ではないけれど、見えない部分でも手を抜いていない昔の職人仕事が素晴らしいと思える部分が、この古ビルの随所に見られ、それを「最高の普通」と言いたくなりました。それは「ちょっとしたことをちゃんとやる」ことで生まれた良さだと感じたのです。

既にあるものに気付いて感じる豊かさ

 歴史的建造物でなくとも、骨董的価値は無くても、その時代ごとの利用者や修理や改修をして下さった職人らが大切してきたのだから良いものだと言い切りたいと思います。60年もの間で何度も地震にも見舞われたと思いますが、それでも残っていることだけでも素晴らしいと思います。不動産価値は、それがどう活かされているかで決まると確信しています。

 今こうして多くの皆様にご利用いただいていることに感謝し、これからもご愛顧いただけるようにちょっとしたことに気付き、ちゃんとやっていきたいと思います。