《ゼニヤのキホン》 2021.8月号より

そもそも「うえほんまち錢屋ホール」って?

今回は「うえほんまち錢屋ホール」についてです。5年ほど前になりますが錢屋本舗南館の新築に合わせて西館東館の改修に取り掛かりました。西館東館は平成元年から「進学教室 浜学園」に一棟貸しをしていましたが、南館を増床することで教室の入れ替えをしながら既存部分の改修を進める計画を立てました。

この機に浜学園の塾生が本番を想定し普段の教室とは違う環境で模試を受けることができ、保護者の方々がゆったりと入試説明会に臨める200人収容の部屋を計画しました。しかし、浜学園さんもそんな部屋を毎日利用されるわけではありません。そこで年間で1/3を浜学園さんにご利用いただき、残りの2/3を自社で運営するような提案をしたところ、受け入れていただく事ができ、この「うえほんまち錢屋ホール」が誕生しました。

いくたまさんの参道に寄席を

折しも錢屋本舗本館の改修に伴って地域に開かれた場所を提供し、文化的な発信も含めたコミュニティ活動をしようとしていました。上方落語の発祥の地が生國魂神社の境内であることを知り、大阪天満宮には立派な寄席があるのに発祥の地にないのでは申し訳ないと思い、何とかつくりたいと考えました。そうは言っても、進学塾の子供たちが模試を受ける部屋ですから違和感は否めません。それでも可動式の舞台や高座を用意して寄席とさせていただく事にしました。こけら落とし講演を桂ざこば師匠にお願いしたところ快く引き受けて下さり「笠碁」を披露して下さいました。

専用の立派な寄席小屋ではないことに心のどこかで引け目を感じていたのかも知れません。申し訳ないと思いながらこの人情噺を聞き、何の涙かわからない涙が溢れました。

その後も回を重ねるにつれ普段は子どもたちが模試を受ける部屋が、落語家の話芸で場の空気が変わり、梅の香が漂う江戸時代の長屋になったり、艶っぽい遊郭になったりするそのギャップがむしろ面白いとひとり悦に浸るようになりました。

勝手な自己満足かもしれませんが、錢屋本舗本館を利用くださり、この冊子を愛読してくださる皆様ならば、この妄想にもお付き合いいただけるのではないかと期待いたします。コロナ禍で思うように寄席の開催はできませんが、再開の折にはぜひお立ち寄り頂きたいと思います。