《ゼニヤのキホン》 2021.7月号より

そもそも錢屋ギャラリーって?

 ゼニヤのキホンと題して考え方や姿勢についてご紹介するページですが「そもそも〇〇って」がシリーズのように続きます。その3回目は錢屋ギャラリーについてです。前号で錢屋カフヱーが錢屋本舗本館とこの町との接点としての役割を果たすものだとお伝えしました。それに併設しながら文化的・芸術的なものに気軽に触れていただける場をつくりたいと考えました。

 設計者に「ここはギャラリーにしたい」と伝えたら最初は白い壁の提案がありました。確かに一般的に作品を引き立たせるには背景は邪魔だというある種の常識があるのでしょう。でも、私が想い描くものは全く違っていました。むしろこのギャップを面白いと感じ「それ(白い壁のギャラリー)は西洋料理の盛り付けの発想ですね」と設計者に例え話しで説明しました。

日本料理の盛り付けのように

 西洋料理の皿は白いものが多いです。白いキャンバスにソースで絵を描くように料理を盛りつけます。ギャラリーの壁といえば白といった感覚はこれと同じなのでしょう。主役は料理で背景はそれを邪魔しない白というある種の常識です。ところが日本料理の器はむしろ白は少なく季節ごとの柄もあわせて色彩も豊かです。それを背景にしながらむしろそこに重ねていくように盛り付け、取り合わせの妙を楽しむのが日本料理でしょう。そんな発想のギャラリーがあっても良いのではないかと思いました。

 だから、錢屋ギャラリーには塗装の壁、タイルの壁、漆喰の壁、木製の壁(本棚)があり、木材や石、ガラス、鉄、アルミ、革、布など様々な素材が混在しています。白壁でないと作品が映えないと考える作家はあえて避けて通られるでしょうが、むしろこれを面白がってチャレンジしてくれる作家の方々のギャラリーであれば良いと割り切りました。

 錢屋ギャラリーで展示会がある時は、その背景との取り合わせも含めてお楽しみ頂けたらと思います。