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UEMACHI & LIFE 2024.11月号

桑原 年弘さん
藤次寺 住職 一級建築士

10年前と今とで、この町は何が良くなって何が悪くなったか。
そして10年後は?暮らす、働く、楽しむ、学ぶ、育てる、育つ、老いを迎える…。
この町を行き交うさまざまな人が、それぞれの思いで描く10年後の寄せ書きです。


住職と建築家 二刀流で街に貢献

私は藤次寺の住職であり、一級建築士でもありますので、日本最大の木彫地蔵大仏をお迎えした「藤次寺の地蔵大仏殿」、今後予定している「藤次寺護摩堂」の設計なども自分で細かなところまで考えられるという恵まれた環境です。藤次寺は365日、門が開いていて、ご自由に参拝することができます。本堂も普段から上がっていただけますし、不動明王(谷町不動尊)も地蔵大仏も公開しています。私が設計した「地蔵大殿」ではガラスの大窓ごしに地蔵大仏のお顔を拝観でき、解放的で親しみあるお寺であることを実践しています。

私は元々三人兄弟の末っ子で後継ぎとして育ったわけではありませんでした。伯父が住職、父が副住職を務めるなかで、大学院で設計の勉強をしていた頃に「藤次寺を継ぐ」という話が出てご縁をいただき、高野山で修行いたしました。ただ、当時は先代のお二人がまだまだ現役でしたので、修了後は一旦設計事務所に勤めて建築の修行を始めました。「いずれ、かかわるなら和風建築の設計だろう」と思ったので、和風建築の設計で著名な建築家に弟子入りしました。その後、藤次寺に戻り、独立して設計事務所を開き、時間の許す限り、保育園や老人ホーム、住宅など、幅広く設計を手掛けてきました。「さつき保育園」の設計では「大阪まちなみ賞・大阪府知事賞(最優秀)」を、「近露王子の家」では「木の国ウッドデザインコンテスト・優秀賞」など、多くの賞をいただきました。

それらの経験・実績が今につながり、「歴史地区である天王寺区界隈の街並みづくりに建築家として貢献したい」という想いが結実し、夕陽丘中学校西隣の「来迎寺本堂・庫裏」、かつての千日前商店街入口付近から現在は四天王寺東門の近くに本院を移転された「竹林寺大師堂・山門」、生魂小学校隣の「長願寺山門」など多くの寺院建築を手掛けさせていただきました。寺院の大屋根のイメージを大切にしながらも現代の建築技術を駆使し、木材のみならずコンクリートや鉄骨といった現代の建築材料を用いて、歴史や宗教に対して敬意を払いつつ、伝統と現代を融合させた新たな宗教建築を創出していくことを目指しています。住職と建築家の二刀流として、今後も多岐にわたって街並みづくりに貢献していくことが出来れば幸いです。 (取材・山田/前田)