本まつばや_三代目_代表取締役社長社長_松下雄一さん

UEMACHI & LIFE 2023.10月号

松下 雄一さん
本まつばや
三代目 代表取締役社長

10年前と今とで、この町は何が良くなって何が悪くなったか。
そして10年後は?暮らす、働く、楽しむ、学ぶ、育てる、育つ、老いを迎える…。
この町を行き交うさまざまな人が、それぞれの思いで描く10年後の寄せ書きです。


和菓子とコーヒーのペアリング ここにしかない提案を

近年は当店の和菓子を六本木ヒルズや東京の高島屋などで販売していただくようになり、それをきっかけに他の百貨店や全国の銘菓を集める和菓子イベントなどでも紹介されるようになりました。
一時期は地元密着にこだわり、他での販売は控えたこともありましたが、良いものを作っても知られないと食べてもらえません。
今は、多くの方に知っていただけるよう四代目の息子が対応してくれています。

もともと和菓子は茶道とのつながりが深く、うちも代々、例外なく茶道をたしなんできましたが、やはり茶道人口は減っています。
そこで最近は和菓子とコーヒーのペアリングを研究し、「本まつばやの和菓子と、それに合うコーヒー」という形で提案する商品に力を入れています。
和菓子とコーヒーを曖昧に合わせるのではなく「この和菓子にこのコーヒー」がポイントです。

そうして新しいことを進めていく中でも大切にしているのは、和菓子作りの基本。
和菓子とは牛乳や生クリームといった乳製品が入ってくる明治以前の菓子を指しますから、うちでは乳製品も、卵以外の動物性原材料も一切使いません。

店の周辺にはマンションが次々に建ちますが、教育熱心な方達の出入りが激しい印象で、昔から長く住んでいる方も少なくなっています。
その中でよく言われるのが、「昔この辺に住んでいた。懐かしい。ここだけは変わってほしくない」ということ。
本まつばやは1927年創業ですから、場所としての価値や地元の方たちの思いを受け継ぎながらも、新しいお客様にうちの味を知っていただく機会を広げることが大事だと思います。
特に和菓子屋は馴染みがないと敷居が高いようですから、東京や有名百貨店で扱われている商品が身近にあるということで、地元の方たちも「うちの近くにこんな店があったんや」とか、「有名だから食べてみたい」と店に足を運んでくだされば嬉しいです。
これからも息子と協力し合って、皆様に誇りに思ってもらえるような和菓子作りを続けていきたいと思います。(取材・山田)

大阪市内にある創作和菓子店 本まつばや