UEMACHI & LIFE 2022.3月号

西島 聡さん
大阪上本町六郵便局
局長

10年前と今とで、この町は何が良くなって何が悪くなったか。
そして10年後は?暮らす、働く、楽しむ、学ぶ、育てる、育つ、老いを迎える…。
この町を行き交うさまざまな人が、それぞれの思いで描く10年後の寄せ書きです。


これからの時代の幸せは
交流する人を増やすことが必須

 大阪上本町六郵便局は大正七年に開局し、何度か移転・局名変更をして現在に至っています。

 昔から上本町に住んでいる人々にとって、高層マンションが立ち並ぶ現在の上本町を誰が想像できたでしょうか。私は、平成十五年この郵便局に着任し、この二十年で、街並みは大きく変わりました。

 また生活者視点で大きく変わったと感じるのは、二世代、三世代で暮らしている家族の割合が減ったということです。
伴侶を亡くされて、一人暮らしで、お金を下ろしに来るにしても、証明書や印鑑、暗証番号の管理が難しく、身内や公的な支援が必要な人、そういった人が増えてきているように思います。

 他方、国際的なテロの発生を受けて、本人確認法が施行され、テロ対策が一般の市民の生活にも影響を与えるようになりました。証明書を見せて頂かないことには事務を進めることが出来ない場面が増えました。

それに加えて、かつては、ご家族の貯金のことは、「おつかい」としてある程度、応じていたのですが、昨今、家族間での揉め事が増えている背景もあり「おつかい」でご家族のご用に応じることが難しくなっています。

 私たち郵便局長を始め、郵便局社員は、地元の皆さまに〝親しまれてナンボ〞の存在でやってきました。
しかし時代の変遷の中で、在り方が改めて問われています。

親しく接客されるよりも、サラっとした接客を求める人が以前よりも増えています。
もちろん都市部と郊外や田舎では若干、違いはあるとは思いますが。

 しかし、一方、そのような世情ではあっても、これからの時代に幸せになるためには、個々人が交流できる人の数、〝関係人口を増やす〞ことが必須とも言われています。

いざと言う時に、助けを求めることができる人も近くに必要です。

 未来の街を良くする特効薬は思い付きませんけれども、いま一度、率先して気前よく挨拶することや、街で出会った人とオープンなままで接することから取り組みたいと思っています。

昭和初期 
前身の大阪大軌前郵便局