UEMACHI & LIFE 2022.10月号

原 健人さん
株式会社データコントロール
代表取締役

10年前と今とで、この町は何が良くなって何が悪くなったか。
そして10年後は?暮らす、働く、楽しむ、学ぶ、育てる、育つ、老いを迎える…。
この町を行き交うさまざまな人が、それぞれの思いで描く10年後の寄せ書きです。


過去から現在をしっかり見て
次の世代を支える人に繋ぐことが大切

 小橋町にある当社の社屋は、私の生家です。
昭和30年に建てた家をそのまま利用しています。

父が機械、建築、鉄道模型などいろんなものに興味がある人だったので、当時では珍しい鉄筋コンクリートの家に、こちらも珍しいクーラーがありました。

各部屋に暖房が循環する仕組みも父が作り、扉はドイツの鉄道車輪の色。
それが今も残っています。

 私には兄がいて幼少期の私達にとって石ヶ辻という町は、わくわくワールドでした。

銭湯好きの父に上六温泉に連れて行ってもらうことを楽しみにしていましたし、散髪もずっと同じ石ヶ辻の店。
公設市場には、よくコロッケを買いに行きました。
写真館のOPスタジオには、先代がコレクションされていた刀を見せてもらいに行くことが楽しみで、その影響からどうしても欲しかったブリキの玩具の刀を、危険だからと止められた親には内緒にして近鉄百貨店で買ったことも懐かしい思い出です(笑)。

 私は大学卒業後、アメリカに留学して現地で兄と起業したのち、日本に戻り兄と共にこの場所で当社を創業しました。
大事にしている創業の理念は、祖父である黒田善太郎の教えを受け継いだものです。

経営理念として「天職を全うする」「和を重んじる」「利益尊重」「社会貢献」を掲げ、生まれてきた以上必ずミッションがあり、それを遂行するためには人として信用を得ることが最も大事であると考えています。

また、「誠実」「謙虚」「感謝」が行動理念です。これらによって社会から信用を得られ、結果として天職を全うすることに繋がると思っています。

 上本町の未来については、過去から現在をしっかり見て、次の時代を繋ぐことが大切ではないでしょうか。

時代は変わっていきますが、日本人は時代を超えて受け継がれる独自の優秀さを兼ね備えていると思います。
にも関わらず、我々の世代が、次の世代を支える人の優秀さを評価できていません。
今も昔も世代間ギャップはありますが、今後はそういう考えが日本の発展を止めてしまいます。

日本人の優秀さをもっと掘り起こして、もっと可能性を見出すのが、我々の世代の役割です。
その意味では、錢屋本舗さんが取り組まれているような、次に残せるものを今の形にして受け継ぐことが必要でしょう。

町や人に受け継がれているものの良さを、次の世代を支える人たちにも理解できる形にしながら、その人たちの考え方も受け取ったうえで次に残す何かを作る。
そういう町になればいいと思います。