UEMACHI & LIFE 2022.4月号

小野 真龍さん
天王寺楽所雅亮会副理事長
関西大学客員教授
浄土真宗本願寺派願泉寺住職

10年前と今とで、この町は何が良くなって何が悪くなったか。
そして10年後は?暮らす、働く、楽しむ、学ぶ、育てる、育つ、老いを迎える…。
この町を行き交うさまざまな人が、それぞれの思いで描く10年後の寄せ書きです。


日本最古の雅楽伝承地
上町台地

 上町台地の南側に聖徳太子が建立した日本最古の官寺である四天王寺があります。

仏教を本格的に導入した太子は、いわば外来のカミである仏様を供養する法会には、同じく外来の音楽や芸能を用いるように指示されました。

これ以降、法会に用いるための外来音楽が次々ともたらされます。

これらの外来音楽が、平安時代に日本化され、現在まで伝承されている日本の「雅楽」が成立しました。
雅楽は神社や皇室祭祀で演奏されるものと思われがちですが、元来は仏教法会で演奏されることを目的として形成されたものなのです。

 さて、四天王寺では太子の死後、太子を偲ぶ四天王寺最大の舞楽法要である「聖霊会」が毎年執行されてきました。

伝承によれば、この法会で音楽や芸能を演ずる楽団は、秦河勝の子孫を中心にして、太子自身によって設置されたと言われています。
それ以来、この楽団「天王寺楽所」は約1400年にわたって日本の雅楽の中心地の一つであり続けました。

つまり、上町台地は、日本の雅楽の最古の伝承地なのです。
明治以降は、伝承団体「雅亮会」が結成され、現代までこの「天王寺楽所」は見事に継承され、雅亮会が伝承する「聖霊会の舞楽(天王寺舞楽)」は国の重要無形民俗文化財に指定されています。

 この十年ほどでインターネットによる雅楽リテラシーも向上し、天王寺舞楽への注目度が非常に高まってきました。

雅亮会は、一昨年には伝統芸能ポーラ賞を受賞し、昨年は国立劇場に招かれて大劇場で公演を行いました。

毎年4月22日に執行される「聖霊会」舞楽大法要は、聖徳太子千四百年御聖忌を記念して、今年は例年より重厚な法要が行われます。

一部でも構いませんので、このご法要にご参詣いただき太子や天王寺舞楽とのご縁を結んで頂ければと思います。

この法要を機縁として、益々天王寺舞楽の普及に尽くし、日本最古の雅楽伝承地であることを誇る上町台地への認知も広めたいと思っています。

聖霊会