UEMACHI & LIFE 2022.1月号

松村 隆志さん
新歌舞伎座
代表取締役社長

10年前と今とで、この町は何が良くなって何が悪くなったか。
そして10年後は?暮らす、働く、楽しむ、学ぶ、育てる、育つ、老いを迎える…。
この町を行き交うさまざまな人が、それぞれの思いで描く10年後の寄せ書きです。


上本町感動劇場

 平成22年(2010年)の夏。新歌舞伎座は難波から近鉄創業百周年を記念して建設された「上本町YUFURA」に移転し、新たな一歩を踏み出しました。

移転が決まった当時、上本町は駅でいえば二駅とさほど離れてはいませんが、長年親しんだ難波からの移転に、従業員一同、不安が無かったといえばうそになります。

まずは新歌舞伎座が上本町に移転、再開場することをお客様はもちろん、出演者や関係者の方々に周知いただくことに劇場をあげて専念しました。

おかげさまで新開場から十年が過ぎ、多くのお客様にご来場いただき、今では、「上本町の新歌舞伎座」と皆様に知っていただけたのではないでしょうか。

 劇場にとって大切な新開場10周年を迎えた2020年。

コロナの感染がじわじわと広がり、2月には政府からのイベント自粛要請も始まりました。

そんななか、劇場として、初日目前の3月公演を全公演中止するという苦渋の判断をしました。
それ以降も公演の中止を余儀なくされ、昨年は厳しい状況が続きました。

 コロナでエンタメ業界の形態が大きく変わっていくのではないかという人もいますが、そう簡単に変わらないと思います。劇場で現実の舞台で体感した感動の大きさは他で得ることはできません。

 1月の新歌舞伎座は「前川清 藤山直美 公演」です。前記した昨年3月に中止になった公演で、約2年経ち上演できることになりました。笑って泣いて温かな気持ちになる公演です。

劇場も久しぶりに賑やかに華やかに新春の公演を迎えます。
どうぞ皆様劇場にお越しください。

 藤山直美さんが、よく「興行は劇場の周りの人たちにも喜んでもらわなあかん」とおっしゃって、劇場のなるべく近くのお店にお買い物やお食事に行かれます。

お父さんの寛美さんから引き継いでいらっしゃることなんだと思います。

新歌舞伎座も上本町の住民の方、ご商売をなさっている方々から愛され、そして応援していただける劇場を目指します。

10年後には上本町が感動溢れる街になり、そして劇場がその一翼を担えるようになっていたいですね。

 皆様にとって幸多き一年となりますよう心からお祈り申し上げます。