UEMACHI & LIFE 2021.8月号

山懸 真平さん
上宮学園中学校・上宮高等学校
校長

10年前と今とで、この町は何が良くなって何が悪くなったか。
そして10年後は?暮らす、働く、楽しむ、学ぶ、育てる、育つ、老いを迎える…。
この町を行き交うさまざまな人が、それぞれの思いで描く10年後の寄せ書きです。


通学路も生活の香りがする上本町が
自然に育む人間性

昨年創立120周年を迎えた上宮学園の校名は、天王寺区上之宮待ちの地名に由来します。

明治の初め、上本町界隈には多くの学校がつくられて、文教地区で閑静な住宅街という伝統が生まれたのは、江戸時代の大阪城詰めの武家の役宅や船上商人の本宅や寮が多かった静かな雰囲気がそのまま明治へと受け継がれたものだと思います。

大正昭和になって街に学校も大きく変化しました。
旧制中学校になって、近鉄電車(大阪電気軌道)が上本町ターミナルを作り、生徒が奈良県から通学し、やがて市電が走り、兵庫県からも大阪駅から市電に乗って通学します。

戦後になって市電から市バスと地下鉄へと移り変わり、谷町線と千日前線開通、近鉄なんば線開通ち交通網の整備によって大阪近郊へと通学圏が拡がりました。

東京の都心にある多幸を訪問して感じることがあります。
駅から生活の匂いがしない街並みを通り抜け高層ビルの谷間に挟まれるような校舎へ通学しているという点です。

上本町のように日々通学路で、生活の香りがする街を経験できることは、自然に大人への人間性を育てられていると思います。

高層マンションが増えて住民が増えることは新しい生活の香りが増えることだと思います。

10年前に共学化し、ストリートダンスや書道パフォーマンスなど強力な発信力を持った部活も増えました。
大学進学後すぐにプロデビューしたシンガーソングライターの有咲りん、漫画家のアスリ(ペンネーム)といったOGの活躍も目立ちます。

10年後の上本町がさらに多様な文化を発信できる街になり、上宮がその一翼を担えたらと思います。