UEMACHI & LIFE 2021.7月号
中村 文隆さん
生國魂神社
權禰宜/広報担当
10年前と今とで、この町は何が良くなって何が悪くなったか。
そして10年後は?暮らす、働く、楽しむ、学ぶ、育てる、育つ、老いを迎える…。
この町を行き交うさまざまな人が、それぞれの思いで描く10年後の寄せ書きです。
大阪最古の神社から思う
上本町への期待
平成11年より着任し、夏の生國魂祭を始めとする年中行事を通じて上本町の人々と接する機会を頂いています。
生國魂神社は約2700年の歴史を重ねる神社ですが、創祀の地は現在の大阪城を含む一帯で、第1代神武天皇が日本統一の旅の途中、大八島(日本列島)そのものの御霊を祀られたことに始まる大阪最古の神社です。
中世には本願寺第八世蓮如上人が神域に草庵を結び、後にこれが石山本願寺へと発展、信長と本願寺勢力による石山合戦後の天正13年(1585年)、政権を引き継いだ秀吉の寄進により現在の新天地へ遷座します。
大坂の陣以降の徳川治世下には天下泰平の世が到来し、徐々に自力を蓄えた町衆が自らの文化や芸能を当神社境内を中心に生み出し、現在につながる落語の始祖・米澤彦八や井原西鶴など数多の傑物が活躍します。
維新後は官幣大社に列せられ朝野の尊崇極まりますが、戦後は街とともに復興の歩みを進めます。
ここ10年はバブル経済崩壊後の長引く平成不況のさなか東日本大震災が我々の価値観を問いただし、国家再構築の機運から五輪や万博の誘致に成功。
大会開催に至るロードマップとして観光立国を推進した結果、全国的に訪日者向け施設が急増。
ここ大阪では観光起点として利便性の高い上本町に外国人が群参し、改元奉祝で一つのピークを迎えました。
今後10年はコロナ禍を契機に労働環境の多様化が加速、ICTを基礎インフラとして生産供給がマスから個へ進展し、循環型社会への移行も相まって個別生産社会が定着。
これを受け集約型のビル群から新旧大小職住が共存するSOHO地区的な街への需要が高まる結果、その素地がある上本町の魅力はより増していくでしょう。