《ゼニヤのキホン》 2025.6月号より

今年も麦わら帽子を買いました。売り場に立った弊社の女性スタッフが、「男性のお客様は、あっという間に決めて、ほとんどの方が購入される」と驚いたように笑っていました。女性のお客様はあれこれ試して買わない方もいらっしゃるようですが、そもそも買い物とはそういうものでしょう。もちろん個人差はあるでしょうが、買い物における傾向の違いは興味深く、考えるきっかけになりました。

私の場合、昨年購入した帽子が気に入っていたので、「今年は農作業用を」と決めており、被ってみて頭に入ればそれでヨシ。鏡で見慣れた顔を確認してよほど違和感がなければ即決です。おそらく、1分ほどで用は済んだと思います。あえて「用は済んだ」と書きましたが、この場合、買い物そのものを楽しんでいるのはじっくり選ぶ(女性の)お客様でしょう。

麦わら帽子は見た目にも涼しく、この時季から盛夏まで大活躍してくれます。素材は天然の麦わら、つばの広さやリボンのデザイン、編み目の細かさで印象が大きく変わります。顔まわりに直接影響し、全体の印象を左右するだけに美的な意識の高い方は敏感になるのでしょう。決めるまでの要件が多くなるのも当然ですが、それは選ぶ過程そのものを楽しんでおられるとも言えます。

男性の場合は、実際の被り心地やサイズさえ確認できれば購入を前提に試される方が多い気がします。一方で趣味の道具や時計、車、家電などスペックが重視される買い物では、事前にじっくり調べて(それ自体を楽しんで)いるので、売り場では迷わないという方も多いのではないでしょうか。それぞれに「選ぶ楽しさ」の形があるようです。

買い物が好きな方にとっては当たり前かもしれませんが、私自身はこれまで売り場(そう言えば、ユニクロの柳井さんは買い場と言いました)で「買うことそのものを楽しむ」という感覚に欠けていたと思います。買う前の「迷い」や「選ぶ時間」も価値ある体験にできたらと考えるようになりました。

弊社では、期間限定のポップアップショップを錢屋ギャラリーやソソラソウで展開しています。これらは売り場として設計されたものではないので、その空間でくつろぎながら、商品のテーマに合わせたお菓子をご用意し、お茶を飲みながらゆっくり迷っていただくこともできそうです。試しやすい環境や、使い方が見える工夫、素材や経年変化の見せ方などを工夫して、「選ぶ時間」も楽しめる売り場を目指したいと思います。意外なアイテムとのコーディネート
提案など、ジャンルの垣根を越えた体験もご提案できればと思います。

読者の皆さまからのご意見やご要望も、ぜひお聞かせください。(文・正木)