《ゼニヤのキホン》 2023.5月号より

スモール イズ ビューティフル

 ソソラソウでの展示販売会の時に出店くださった手芸作家の加藤友香さんと話していて響いたのは、「小さいからカワイイのに…」という言葉でした。彼女のつくるポーチを見た方から「もう少し大きいサイズはないの?」「○○が入らない」と言われることがよくあるそうです。その場にいた画家の香西生孔さんも「そうそう。私もカバンにマチがないと、あまり入らない…と言われる」と話に入ってきました。香西さんは〝持って歩けるアート〞としてカバン型の作品をつくっています。

 この会話のポイントは実用性の評価です。錢屋商店では「要るモノより欲しいモノを」と謳っています。ソソラソウは用途を求める設計者と決別することで生まれた「目的アト付け空間」です。実用性一辺倒のモノ選びから少し離れてココロ踊るモノ選びをして頂きたいと考えているからです。小さいからカワイイという感性を信じてモノづくりをする作家の感性を支持し、売れそうなモノづくりとは違うその感性を信じて行動する小さい勇気を愛おしく思います。

多様化、複雑化した社会課題の解決に向けて

中小企業というとどんなイメージをもたれるでしょうか?中小企業の定義は法律上、業種と資本金又は出資総額、常時雇用従業員数で決まっていて錢屋本舗は中小企業です。いったい大、中小の分類にどんな意味があるのでしょう?経営上は確かに意味もあるのですが、一般的にはドウデモイイことだと思います。むしろ言葉のイメージによる弊害の方が大きいです。スポーツの世界で期待される新人が、たまたま体が小さかったりすると「小さな大型新人!」となります。大きいことが良いという思い込みがあるからでしょう。

日本は世界でも中小企業の多い国です。その日本で大阪は中小企業の多い都市です。私は、中小企業は大企業にはできない事をやる企業だと思っています。大きなことはできませんが細やかに迅速に動けることは素晴らしい特徴です。

SDGsが叫ばれますが、そもそもは規模の拡大を目指したことによって生み出された社会課題がたくさんあります。もちろん解決に取り組むのですが、社会課題がここまで多様化、複雑化した昨今、100人規模の中小企業100社が100種の課題解決に向けて取り組むことは、1万人規模の大企業1社の取り組みと同等以上に現実的であり価値があると思います。

中小企業の多い大阪は、また日本はその価値を見直し発信すべきだと思っています。小さいことが美しく輝く社会であれば良いと思います。(文・正木)

見出し写真 撮影:Yohei Sasakura