《ゼニヤのホンキ》 2023.5月号より

専有より共有 分かち合える豊かさ

 「#専有より共有分かち合える豊かさ」は錢屋本舗本館の価値観の一つです。専有することが豊かだという思い込みに縛られたくない、という想いがあります。例えば、錢屋本舗本館には古いレコードプレーヤーや真空管アンプ、大型のスピーカーがありますが、中古店で状態の良いものを見つけると、前の所有者がどれほどそれを大切にしてきたのか、そこに込められた思いのようなものを感じます。だからこそ、今こうしてこの状態でここにあるのだ…と、会った事もない前の所有者に対する感謝の気持ちすら湧いてきます。

 3月にJetseeter(株)と共催した『On The DESK vol.5』で『ANTOU(アントウ)』というボールペンと再会し、この価値観と通ずるものを感じたため、皆さんに共有したいと思います。


ANTOUとは?

ANTOUは台湾の中西部、彰化をベースに、経験豊富な技術力と高い評価を得ているモノづくりのプロ、ダイキャス・メタルと、ロンドンを拠点に欧州で活躍した若きアートディレクター、イエン氏との協業で生み出されるステーショナリーとオフィスアクセサリーのライフスタイル・ブランドです。

メーカーに関係なく「様々なボールペン芯を使える」という日本にはない発想と、ロンドンでデザインを勉強した台湾人のイエン氏の感性が非常に面白く「日本への展開に一緒に取り組もう!」とJetsetter(株)の村雲さんからの声掛けで、日本に上陸することが決定しました。


強く共感したモノづくりの考え方

強く共感するのは、現存するボールペン芯はメーカーを問わず、規格さえあえば使えるところ。日本のメーカーでは残念ながら想像し難いです。自社ブランドのことだけを考えた開発であれば容易な部分も、ANTOUはある程度のメーカーのリフィルが対応できるように考えたわけですから、開発の手間暇もより必要だったと思います。しかし、自社の手間暇よりも文房具を愛する作り手だからこそ、使い手のことを想像し、モノづくりに力を注いだのでしょう。ANTOUの思想を村雲さんが共感・理解し、錢屋本舗本館であれば共感の輪が広がるだろうと紹介いただけたことも嬉しいことです。

共感できる人と共通言語で語り合うことで様々な発見が生まれます。そんな風に語り合える場・集える場を創りたいと思います。(文・中島)


村雲さんにプロデュースいただいた錢屋本舗本館オリジナルインク『藏藏(カンカン)』錢屋商店で販売中。