《ゼニヤのホンキ》 2026.9月号より
森で見つける、新しい「ただいま」
家族と聞いて、誰を思い浮かべるでしょうか。9月19日(土)より開催する『人形作家みちやすの谷の仲間たち』では、奈良・吉野の木くずを原料にした“森のねんど”で生み出された作品を通して、家族という存在の輪郭をあらためて見つめ直します。
人形作家・道康さんが生み出す作品の多くは、名前や役割が決まっていません。「誰かのお母さん」「誰かの子ども」といった関係性を固定しないからこそ、見る人は自分自身の記憶や経験を重ね、それぞれの物語を思い描くことができます。まるでムーミン谷のように、多様な存在が自然に寄り添い、互いを受け入れて暮らす世界。その風景は、これからの家族の在り方を問いかけます。
今回の展示には、道康さんが長年の制作の中でたどり着いた“こもれぎ”という考え方も息づいています。「こぼれた技術」を意味するこの造語には、効率や便利さだけでは測れない、遊び心や創造性、人と人をつなぐ力へのまなざしが込められています。役に立つことだけを目的としないものづくりが、人の心を豊かにし、新しい関係を育んでいく。
展示では、手に取って購入できる作品や写真集などもご用意する予定です。また、森のねんどで手のひらサイズの小さなまちをつくるワークショップも開催します。ふるさとになるような風景を思い描きながら、理想の暮らしについて語り合いましょう。もちろん、人形作品の受注も承ります。
錢屋本舗本館がこの展示を届けたい理由は、作品を販売するためだけではありません。人との距離感が変わり続ける今だからこそ、「帰ってきたい」と思える場所とはなにかを、ものづくりを通して、ともに考えたい。その問いに触れたとき、あなたの中にも新しい家族の風景が生まれるかもしれません。(文・小山)

