《ゼニヤのホンキ》 2026.8月号より

使い道の外側にある、豊かさ

子どもの頃は、身の回りにあるものすべてが遊び道具でした。空き箱で家をつくり、布の切れ端を動物に見立て、小さな石ころや木の実に役割を与えて遊ぶ。大人から見れば何でもないものでも、子どもはそこに面白さを見つけ、自由な発想で新しい世界を生み出していきます。

けれど成長するにつれて、そういった時間は減り、いつの間にか目の前のものを「使えるもの」と「使えないもの」に分けて考えるようになっていませんか。暮らしていくうえで必要な判断ではありますが、その一方で、目の前にあるものの可能性に気づく力や、自分の感覚を信じる力を、少しずつ手放しているのかもしれません。

錢屋本舗本館で開催している『アートのかけら』は、子どもたちの創造力を育む場として続けているイベントです。作家の皆さんからご提供いただくのは、本来であれば捨てられてしまうハギレや素材たち。けれど、それらは決して価値を失ったものではありません。色や形、質感には、それぞれのものづくりの時間が刻まれており、新たな表現の可能性を秘めています。

そしてこのイベントで私たちが届けたいのは、上手な作品づくりではありません。不要とされたものの中に価値を見つけること。正解を探すのではなく、自分の感覚で世界を組み立てていくことです。便利で効率的な時代だからこそ、すぐに答えの出ない時間や、自由に想像を膨らませる時間は、ますます貴重になっているのではないでしょうか。

毎年、子どもたちだけでなく保護者の方が夢中になっている場面にも出会います。誰かに評価されるためではなく、ただ表現することを楽しむ。そんな豊かな時間を、今年の夏もたくさんの方と分かち合えたらと思います。(文・合田)