《ゼニヤのホンキ》 2024.8月号より
直すだけじゃない、お直し
京都の西京極で【洋服のお直し美希】を営んでいる小林美希さん。錢屋ギャラリーでは、2ヵ月に一度、洋服のお直し相談会を開催しており、今年で3年目になります。今回改めて“美希さんのお直し”について、お話しを伺いました。
美希さんのお直しは、ボクサーパンツから紳士服、ジーンズやドレスなど、多岐に渡ります。『まずお客さまが求めていることを受け入れて、自分が持ってる知恵を引き出す。18年お直しを続けてきた経験値と応用力を活かし、お客さまが納得するまでやり切ります』これぞ“ホンキ”のお直しだ…と改めて思いました。
『嘘がつけない性格だから、お直しする必要がなかったら、しない方がいいって言うんです』と、美希さんは笑う。2年前の体験談になりますが、私自身、母が30年前に着ていたセットアップを自分らしく着こなせないかと美希さんに相談したことがありました。すると、『この形は必ず流行が来るから、そのままにしておいた方がいい。すごく似合ってる』とアドバイスをいただきました。そして今その服は、母と兼用するくらい気に入っています。お直し屋さんで“お直しをしなくてもいい”という概念があることをはじめて知りました。
とことん向き合う
ご自宅から服を持参された方の、声色や空気感も見ておられる美希さん。その服の思い出や、誰からいただいたのか、全部聞く。お直しする服には、必ずストーリーがあるのだそう。『会話をすることが、お客さまの望むお直しに繋がるんです』と、ここまで人と向き合うことに情熱がある方って、そうそういません。
お直しの受け取りは2ヵ月後になるので、夏物だけでなく秋冬に着たい服を、ぜひご持参ください。お気に入りの洋服の、思い出話をするだけでも構いません。錢屋ギャラリーでお待ちしています。(文・尾松)