《錢屋カフヱー カフェタイム》 2021.11月号より

見上げてみれば
こちらの照明達、錢屋カフヱーやギャラリースペースの空間の一部になるのですが、皆さんはどちらの照明か分かりますか?

まんまるお月さまのような明かり、カサの形が印象的なシェードランプ、放射状に伸びる無数のアームなど…。
自然光がよく入る錢屋カフヱーは、明かりを時間帯に合わせて調光しているため、日中は照明をあまり意識することも少ないかもしれません。
日も暮れ始めバータイムになるに連れて、これらの明かりの存在感も増し、キャンドルの明かりと相まって店内の雰囲気をより一層引き立ててくれています。

錢屋カフヱーにご来店の際は、ぜひこれらの明かりの場所を見上げて見つけてみて下さい。

明かりにもたくさん種類があります。
最近では電球の寿命や低消費電力の観点からLED電球が主流になりつつありますが、錢屋カフヱーでは、そのLED電球や蛍光灯などを使用している明かりはほとんどありません。

当店では、エジソン電球とよばれるフィラメントが見えるタイプのものや、白熱電球、ハロゲン電球などを用いて空間を様々に演出しています。
LED電球や蛍光灯では感じることの少ない、ほんのり暖かみのある優しい光が特徴です。
エジソン電球などは、一つ一つ違っている繊細なフィラメントの形状、そのフォルムとレトロなルックスが魅力的です。

みなさんも、錢屋カフヱーはもちろん、街中の明かりや、ご自宅の明かりを改めて意識して見られると、新しい発見があるかもしれませんね。(文・後藤)

11月11日11時11分

1が並ぶこの日この時。
97年前、新しい伝統が始まった時間です。

京都府と大阪府のちょうど境目あたりに椎尾神社という神社があります。
この神社は元は西観音寺といい、聖武天皇の勅により行基が創建したと言われています。
後鳥羽上皇も行幸した由緒ある広いお寺でした。
しかし明治の廃仏毀釈により廃寺となります。
西観音寺内にあった鎮守社は椎尾神社と改称して残りました。
それ以外の境内にあったお堂や仏像などは、いくつかは近くの寺に移されたものの、残念ながらその多くは破却され姿を消しました。

それからおよそ50年たった一九二四年の西観音寺の境内跡。
そこには日本初のウイスキー蒸溜所が建てられました。
「日本でウイスキーづくりができるはずがない」と言われ無謀とされた時代。
サントリーの創業者である鳥井信治郎は周囲の反対を説き伏せ、熱心にウイスキーづくりのために邁進し、蒸留所を完成させました。
その年の11月11日11時11分、蒸留釜に最初の火が入ります。
今では世界に誇るウイスキーを生み出す山崎蒸溜所が稼働を始めたのです。

現在、椎尾神社では11月11日、年に一度サントリー主催で秋の祭礼が執り行われています。
この祭事が始まる時間は時分ちょうど。
山崎蒸溜所の職人はじめ多くの関係者が参詣しています。

11月11日は日本のウイスキーづくりの原点に立ち返り、大切に受け継ぐことを誓うという新たな伝統の日であり、一方その歴史を礎に時代とともに勇気をもって変える革新の日でもあります。
1の並びから失われたもの、生み出されたもの、伝えていくものを思いつつ山崎を飲むと、また違った味わいを感じられるかもしれません。(文・宮原)