諦めるのは悪いこと?

 「最後まで諦めるな」と教えられて育った人は多いでしょう。私も若い頃は、諦めることは負けることだと思っていました。しかし年齢を重ねるにつれ、その考えは少し変わりました。趣味の登山で、3000m峰の山頂まで、あと150mというところで天候が悪化し、引き返したことがあります。経営でも、続けることより撤退することが正しい場合があります。それを「諦めた」とは言わず、「見極めた」と言おうと思います。何を守り、何を手放すのか。その判断には、その人の価値観が表れます。与えられた時間も力も限られています。すべてを抱え続けることはできません。だからこそ、何を手放し、何を大切にするのかを見極めることが必要になります。諦めることは、投げ出すことではありません。変えられない現実を受け入れ、本当に力を注ぐべきものを選び直すことです。そう考えると、「諦める」は後ろ向きな言葉ではなく、より良く生きるための判断とも言えるのではないでしょうか。見極めるとは、未来を諦めることではなく、未来のために何を遺すかを選ぶことなのかもしれません。その積み重ねが、自分らしい生き方になっていくのだと思います。(文・正木)