後で調べるより、今考える
社内外の会議で、若者が黙ってメモをとる姿をよく見かけます。どうやら「後で調べよう」と考えているようです。その真面目さは頼もしい一方で、自信のなさにも映ります。たとえ未熟でも、既にある経験や知識を総動員して「いま、この瞬間に考え、言葉という成果を示す」ことに意味があります。正解を求める教育を受けた若者が、つい見落としがちなのは、会議の、互いの考えを交わし合って新しい気づきを育てる場としての価値です。そこから議論が広がり、本人だけでなく周囲にとっても学びとなります。これは、私のような年長者にとっても教訓を含んでいます。経験を今に照らすことなく、答えを決めつける根拠にしてはいないか。年齢を重ね、増えた思い出のアルバムに残る風景はすでにそこには存在しません。けれども、その時々に感じ考えたことは確かに生きており、それを今の言葉として紡ぐとき、経験は豊かさとなり、未来の誰かに活かされるのだと思います。(文・正木)

