どちらがもったいない?物と自分

よほど特別な物なのでしょうが、もったいなくて使えないという人がいます。幼い頃、物を壊してひどく叱られたときに、自分と物とどっちが大切なんだろうと思った記憶はありませんか?茶道は名物を扱えるように自分を高めます。一流の職人は道具の手入れを欠かしません。物と人との関係は複雑です。もったいないは勿体ないと書き、勿体は本来の価値(損なわれているあるべき価値)を意味します。「もったいない精神」はケニヤ人のワンガリ・マータイ氏がその言葉と共に国連を通じて資源を大切にしようという意味で世界に広めました。大阪の商人は「始末の精神」を大切にしてきました。単純には物を始めから終わりまで使うという意味ですが、仕事や人間関係に対しても責任を全うするといった精神文化です。古今東西、物を大切にする精神はあるようです。その背景を探れば、手仕事に対する敬意や自然との共生、それらに宿ると考えられる精霊など神秘的な存在との関わり、環境保全、生活哲学として、人と過ごす時間を大切にし整える精神など様々ですが、物だけにとどまらない点で共通です。(文・正木)