きらいな人を思いやる
私は、人として最も大切な資質は「思いやり」だと思っています。しかし、実際にそれを示すのは簡単ではなく、そもそも思いやりとは何かと考えることもあります。多くの宗教が、互いを思いやることを人の心の成長として位置づけ、それが幸福につながると説いてきました。「慈悲」や「無償の愛」など表現は異なりますが、重要視する姿勢は共通しています。誰かが困っていれば助け、相手の気持ちを理解しようとし、弱い立場の人を放っておかず、言葉や行動で傷つけない――こうしたちょっとした配慮が、人と人をゆるやかに結びつけます。相手を大切にする姿勢は、関係性の安定につながります。嫌いな人に思いやりを向けるのは難しいものです。仏教では、相手を自分の成長をうながす存在として受けとめてみることが勧められています。その人にも事情や不安があると想像すると、心が少し和らぎます。思いやりとは、好き嫌いの感情、正しいかどうか、損か得か、そんなものに左右されず、相手のありようを認め、寄り添おうとする姿勢なのだと思います。(文・正木)

