使っている言葉を見直してみる
北極圏の先住遊牧民ネネツ族には「ありがとう」という言葉がない、というルポタージュを読んで興味をもちました。調べてみるとボルネオ島の森の民プナン族には感謝も反省の概念もないようです。ネネツ族の長に謝意について尋ねると「自分たちが、それと同じ気持ちを持った時には言葉ではなく行動で示す」と答えたそうです。プナン族の場合は、そもそも専有の概念がなくモノをもらっても礼を言わず、壊しても謝る必要はないそうです。これらは助け合うのが当たり前の共同体志向の強い伝統的社会にみられる傾向です。
自国語は文化の基盤ですから大切なことは間違いありませんが、こういった文化人類学的視点は示唆に富みます。日本人にとって「ありがとう」は大切な言葉で多用しますが、言いたくなるところをじっと我慢して態度や行動で謝意を表してみると、いつもの関係に変化があるかもしれません。そんな実験は面白いと思います。(文・正木)

