《錢屋カフヱー カフェタイム》 2021.9月号より

ホッと一息やさしい焼き菓子とともに

錢屋カフヱーでは、コーヒーや紅茶のお供にぴったりの焼き菓子を、現在四種類ご用意しています。
マドレーヌやフロランタンなどの定番のスイーツはもちろん、素材そのもののおいしさを活かした、やさしくてなんだか懐かしい焼き菓子が人気です。
ちょっとしたお茶うけに、お仕事や家事の合間のリラックスタイムに、お手土産にも喜ばれる自慢の焼き菓子たち。
中でも、ほんのり塩味がアクセント、カリカリ食感が楽しいキャラメルサブレは大変好評で、錢屋の『折々のクッキー缶』にも入っています。

焼き菓子の中でも、皆さんにおすすめしたいのが『カイザークグロフ』。
召し上がられたことはありますか?


「カイザー」とはドイツ語で「皇帝」のこと。
チョコレートとくるみがごろごろっと贅沢に入り、バターの風味とラム酒がほんのり効いたリッチなケーキです。
フランスのアルザス地方では、日曜日の朝に焼かれる贅沢な菓子パンとして扱われ、マリーアントワネットがオーストリアから嫁入りの際に持ち込んだという説があるほど大好物だったとか。
クグロフのこの王冠のようなデザインは、王侯貴族から愛されたしるしとも言えるでしょう。
錢屋カフヱーでは、そんなリッチなケーキも、ぺろりと食べてしまえるかわいらしいサイズ感で焼き上げています。
ぜひ一度召し上がってみてください。

探偵はバーにいる?

これは私がワインが豊富にある札幌のスぺインバルで働いていたころの話。
ジャパニーズウイスキーに注目が集まりだした時期。
20代前半の男性が一人、カウンターにいらっしゃいました。
見たことのない顔でしたので初めての来店でしょう、少し落ち着かない様子からして、バーに一人で飲みに行くことはないのだろうと想像できました。
男性はメニューを見もせずに、お飲み物はいかがいたしましょう、と伺う私に注文を告げました。
「しらすをお願いします。ロックで。」

難易度の高い注文です。
男性の顔にはふざけた様子はもちろんなく、大真面目に、でも少し恥ずかしそうに注文していました。

男性にもう一度聞くにしても、彼に恥ずかしい思いをさせてしまってはもうバーには来てくれないかもしれません。
一人で来てくれた若い彼のために真のオーダーを見つけなくては。

そこはワインも豊富なお店でした。
ですから最初は、ぶどう品種シラーズを使ったワインの聞き間違いを疑います。

「飲み方はロックでよろしいですか?」

あえてこちらを確認します。
ワインをロックで飲む方はそう多くはいらっしゃいません。

「ロックでお願いします。」

彼の顔からは当然ロックだ、という意思が見られ、ワインという選択肢はないのだと私は感じました。

注文が何か未だわからぬまま、氷を入れたグラスをカウンターに用意し、彼の顔をチラッと見ます。
彼がカウンターの後ろの棚、バックバーをじっと見ているのに気づきました。
ロックという注文、彼の見ている方向に並ぶのはウイスキーのボトル。
私も振り返り「しらす」のボトルを探します。
……ああ、それか。

シングルモルトウイスキー『白州』をロックで差し出します。
よかった、正解だ。
このあと当時放送していた朝の連ドラ『マッサン』の話をしつつ、『はくしゅう』を覚えて帰っていただきました。