《錢屋カフヱー カフェタイム》 2021.8月号より

本当のおいしさとは

皆さんの中には「Bean to bar」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
当店でも、専用のチョコレート冷蔵ケースで、トモエサヴールさん厳選のチョコレートを多数扱わせて頂いておりますが、その「Bean to bar」という言葉本来の意味を意識したことはありますか。

一般には、「カカオ(Bean)から板チョコレート(Bar)まで製造者が一貫して手掛けるスタイルのこと」を指します。
厳選したカカオ豆の特性を最大限に生かすため、作り手の想いで様々な工夫がされている事が特徴です。

では、当店で取り扱っている「チョコレート」と、小さい頃から親しみのある「チョコレート」との違いは何でしょうか。
それは、美味しさ以外にも、様々な要素があります。

トモエサヴール代表のさつたにかなこさんは「カカオを作っている人の顔が見えて、生産者が見えて、商品になるまでの工程がとてもクリアーで、誰も泣いている人がいない(搾取されている人がいない)チョコレートを販売したい。
」そんな想いでチョコレート本来の魅力を伝える活動をされています。

錢屋シネマでも度々上映させて頂いている作品『バレンタイン一揆』では、量産されるカカオ豆農家の労働問題が取り上げられているように、フェアトレードであることも、チョコレートを味わう上で重要な違いの一つになるのではないでしょうか。

当店では、そんな輸入者・製造者・生産者の想いを大切にしたチョコレートを、皆さまにも味わってほしいと思い、選りすぐりの商品を取り扱いさせて頂いてます。

ノンアルコールビール・ワインはどう作られている?

お酒に弱い、車の運転、休肝日、妊娠中などなど、飲酒したいが飲めない事情があるとき。
コロナ禍の健康意識の高まりもあって、ノンアルコールビール・ワインも身近に感じられるようになりました。
『アルコールのないお酒』という矛盾した存在ですが、一体どう作られるのか知っている人は多くないようです。

ノンアルコールビール・ワインの製法は大きく分けてふたつあります。
ひとつは完成したお酒からアルコールを抜く方法。
アルコール分を取り除く方法はさまざまあり、かつては熱を加えてアルコールを飛ばす方法が多かったのですが、近年では浸透膜を利用しての分離が主流になってきています。
人工透析と同じような技術が活用されています。

ふたつめは、製造工程で発酵を抑制する方法。
アルコールを生成しにくい専用酵母を使用し、活動中の酵母を濾過して発酵を止めさせたり、低温下での発酵により生まれる独特の風味を得ながらアルコールの生成を抑えたりして製造します。
酵母の活動から得られるアルコール以外の成分を得ようとするやり方です。

前者は一旦アルコールが生成されているため、日本の酒税法により課税され、商品の価格が高くなってしまいます。
それを避けるため、日本の各メーカーは後者の方法を利用してノンアルコールビール・ワインを製造しています。
逆に国外のメーカーでは、お酒を作ってからアルコールを分離する方法を取ることがほとんどです。

商品として出回り始めた15年ほど前に比べると、格段に味も良くなってきておりメーカーの努力が表れています。
『お酒の偽物』としての宿命を背負って誕生したノンアルコール飲料ですが、時代の要請もあって市場も10年前に比べて4倍以上に伸びています。
偽物扱いから本物として扱われる日も、そう遠くないのかもしれません。