UEMACHI & LIFE 2024.6月号

衣川 明さん
鮮魚 きぬ川 店主

10年前と今とで、この町は何が良くなって何が悪くなったか。
そして10年後は?暮らす、働く、楽しむ、学ぶ、育てる、育つ、老いを迎える…。
この町を行き交うさまざまな人が、それぞれの思いで描く10年後の寄せ書きです。


天然ものにこだわって55年 お客さんにええ魚を食べてほしい

創業は1949年(昭和24年)。戦後、魚の配給を仕事にしていた親父がそのシステムがなくなり、管轄だったこの場所に家を買って商売として始めました。私は生まれも育ちも上本町で、生魂幼稚園、生魂小学校、夕陽丘中学校出身。幼い頃は生國魂神社の周りにあった池で、よく亀を取って遊んでいました。生玉表門商店街は生國魂神社の参道で、今の半分ぐらいの狭さ。生國魂祭では各家庭でごちそうを出すから、うちは材料の提供に大忙し。祭を楽しむどころではなかったです(笑)。

高校卒業後は調理師学校に行きました。子どもの頃からうろこ取りだけは手伝わされたし、魚をさわることには誰よりも慣れていたから(笑)。その後学校の教務課で先生の助手をしていた20歳のときに親父が大病を患い、店を手伝うことになりました。それから55年。親父と交代したのは平成元年あたりです。

店で大切にしているのは”天然もの”にこだわること。やっぱり天然ものは違いますよ。広い海の中を泳いでるし、いろんな餌を食べてる。ええもんも食べるし悪いもんも食べるけど、生き残るのは最高にええ魚だけ。それが天然ものです。大抵活けで仕入れてきて店でさばきます。鮮度が肝心やからその日だけの勝負です。

お客さんは近所の人が中心。車でわざわざ買いに来てくれる人もいますから、注文を聞いて仕入れてくることもあります。「あの人は昨日何を食べた。おとといは何を食べた」「何曜日やからあの人が買いにきてくれる」と全部インプットされてるし、ええ魚を見つけたら「あの人に買うてもらおう!」と思って仕入れてきます。

最近は鮮魚店がなくなって商売は難しくなってきてますが、お客さんが望んでくれるからええ魚を仕入れられる。商売させてもらううえで、大切なのはお客さん。お客さんはやっぱり神さんです(笑)。

私自身は多趣味でとことんやらないと気が済まない性分。ハンター歴は40年。海・山・川のすべてで釣りもします。自分で捕ってさばいて食べたいんです(笑)。人生を楽しみながら、あと45年は店を続けて、お客さんにええ魚を食べてもらえるように頑張りたいです。(取材・山田/前田)